「長宗我部様!」


 旦那様と話をすると言っていたのになんでここにいるのだろう。話は終わったのだろうか。


「……大丈夫か?」

「え、あ、はい……大丈夫です」

「怪我は……顔が赤い、手当てをしなくては」


 長宗我部様は私の頬に触れる。彼の手は冷たくて気持ちがいい。


「長宗我部様、お待ちくださいませ。何かの間違いではないですか? 櫻月綾は私です。評判のいいのは私であって紗梛じゃないです。紗梛は下賤な女の娘ですっ」

「わかっている。だが、君が評判がよかったのはこの櫻月紗梛が代わりに勉学も香席も務めていたからだろう」

「……! 紗梛、あんた長宗我部様に言ったのね!」


 私を怖い目つきをして睨み、そう言った。だが、長宗我部様は綾様に向かって言い放つ。君は何もわかってないのだな、と。