「…俺も、一緒。最初に話したときよりも、前に――」
幸村くんの目が私のほうに向いて、花火を映したレンズの奥から見つめられる。
その口から紡がれる話を聞いた私は、おどろいて息を飲んだ。
絶対に、私の片想いだと思っていた。
でも、私が幸村くんのことを好きになる前から。
幸村くんの好きな子は、私だったんだ…。
「…家帰っても、連絡するから。遊びとか、誘ってもいい?」
「…はい。お誘い、待ってます」
幸村くんは私を見て、あの日のように笑ってくれる。
それがうれしくて、私も笑い返した。
――パチパチと、レンズの中で花火が弾ける。
生温い風が、ざぁっと木の葉を揺らしていた。
[終]



