「近くの公園探してくる!お前はコンビニ戻ってろ!」


「はぁー!?」


「ゆ、幸村くん…っ」




 幸村くんは私の手を掴んだまま、歩道に沿ってコンビニから離れていく。

 私の体はこわばるよりも熱くなって、別の緊張で上手く足が動かなかった。

 繋いだ手が顔よりも熱く、汗ばんでいく。




「…」


「…」


「…」




 車が近くを通り過ぎて、そのエンジン音がうしろから前に流れる。

 風が木の葉を揺らす音も、私の足元でカランコロンと鳴る下駄の音も、私の心臓の音より小さかった。


 幸村くんと、手を繋いでる…っ。




「ぁ、あのっ、幸村くん…っ」


「…あ、ごめん」




 コンビニからだいぶ遠くに離れるまで、声をかけることもできなかった私だけど。

 緊張で裏返った、みっともない声をあげると、幸村くんは振り返ってパッと手を離した。

 真っ赤な顔が見られてないといいなと思っても、街路灯の下で足を止めてしまっては、それも無理だろうなとうつむく。




「…」


「…」


「…」




 沈黙。

 鼓動ばかりが速くなる沈黙が、落ちた。