ただでさえ重たい段ボール箱が、さらに重くなった気がした。




「すみません、通ります…」




 声をかけると、廊下を広く使っていた男子達は、ちらりと私を見て道を空けてくれる。

 私は荷物のせいでいつもより遅くなった足を、それでも一生懸命動かしてせっせと通り抜けた。


 今度は安心から、小さく吐息がもれる。

 少しずり落ちた段ボール箱を、ひざを使って押し上げた、そのとき。




「大丈夫?」




 うしろから聞こえた声は、男子のもの。

 いまの、私に?と振り返ると、茶色の髪をした幸村(ゆきむら)くんが立っていた。




「あ、ふらふらしてたから…」




 紺色のジャージ姿は、つい先ほど道を空けてくれた運動部とおなじ恰好。

 いつもしているメガネをしていないのも、彼が部活中だったあかしだ。


 幸村くんは、恋バナに必ずと言っていいほど登場する、同学年のモテ男子。




「…大丈夫です」