「じゃー、自己紹介しよー!」


「そうね、じゃあバカ晴斗(はると)から」




 車の中に移動すると、甚兵衛(じんべえ)の男子が元気よく言う。

 玲香(れいか)の家の車は6人乗りで、私と玲香が一番うしろ、幸村(ゆきむら)くんたちは、まんなかの席に座った。

 私たちは玲香のご両親が助手席と運転席に乗りこむのを見ながら、自己紹介をする。




「バカとはなんだ、バカとは。俺は岩永(いわなが)晴斗(はると)千秋(ちあき)とはおなじ学校で、降りる駅がおなじだから仲良くなったんだ。晴斗くん♡って呼んでいいよ」


「はぁ?」


「きっしょ」


「千秋と玲香には言ってねーよ!」




 甚兵衛の彼が振り返って私にウィンクすると、玲香が辛辣(しんらつ)なコメントをした。

 私は苦笑いしながら、こう言われて苗字で呼ぶのも失礼かな、と思って「分かった、晴斗くん」と答える。


 幸村くんみたいなやさしい男子もいるって知ってから、男子への苦手意識はちょっとうすれたし。