窓を叩く雫。絶え間なく、透明な線が下に引かれる。
どこからか入りこんだ湿気が、首の後ろにこもっていた。
一度髪をかき上げて風を通したいところだけど、両手がふさがっていてそれもできない。
「はぁ…」
無意識にため息がこぼれる。
胸に抱えた段ボール箱に入っているのは、文芸部の歴史。
つまるところ、歴代の作品集だ。
部室から倉庫へ、この作品集を戻しに行く役目を負ってしまったのは、ツイてないとしか言いようがない。
「28、29、30…っ」
「1、2、3…」
階段を下りると、渡り廊下の先から、室内練習になったらしい運動部のかけ声が聞こえてきた。
私の目的地も渡り廊下の先だから、彼らの前を通らなくちゃいけないんだけど…。
男子は、苦手だ。
いじわるだし、私みたいなのろまな女子をきらっているし。