『これより第五十一回体育祭を始めることをここに宣言する!』
そう美優の合図とともに音楽が流れる。
初めは一年生のリレーからだ。
碧くんと約束をしたのでちゃんと応援しないと!
「紗奈ちゃん!頑張るから応援して!」
「うん!応援するね」
『一について、用意……ドン!』の合図とともに初めの人たちが走る。
碧くんは運動神経が良いそうなのでアンカーを走るみたい。
私なら絶対アンカーなんて走れない…!
順調に碧くんのいるチームは一位を取っていた。
しかし、バトンパスの時にバトンをうまく渡せずに落としてしまった。
順位は六クラス中一位だったのが今は最下位だ。
それからも頑張るもなかなか最下位を脱出できなかった。
そうしてバトンが碧くんに渡された。
「山野くん〜!!頑張って〜!!」
「碧!がんばれ!一位になれ!」
みんな碧くんに向かって応援している。
私も頑張って応援しなきゃ!
「碧くん頑張って!!」
急に碧くんが振り返って微笑んでくれた。
「キャーー!!」
「今私に微笑んでくれた!」
「はぁ?絶対私よ」
「いや私よ!」
これは、私に微笑んでいない。
勘違いしていた私が恥ずかしい…。
「ねぇ、山野くんすごく早くない?」
「これ!一位狙えるぞ!」
そうしてさらに応援の声が…。
やっぱりすごいな…。
碧くんはどんどん他のチームを抜かしていきついに二位にまで上り詰めた。
「碧くん!!最後まで頑張ってー!!」
私も頑張って応援する。
碧くんの走るスピードが上がっていきついに一位に追いついた。
そしてそのままゴールテープが切られた。
どっちが早かったんだろう…。
『ただいまの結果をお知らせします。第六位、一組。第五位、四組。第四位、五組。第三位、二組』
私たちは三組…。相手のチームは六組。
お願い!!
『第二位、六組。そして第一は三組でした!』
「山野くんすごいよ!!」
「碧!!ありがとう!」
みんなすごい碧くんに群がっている。
私もあん中に入って応援したい…。でもそんな勇気が私にはない…。
また後でおめでとうって言えばいいよね。
それに次はふゆりちゃんや桜宮くんの出る種目がやるから見ないといけないし、それにその次は私たちの番だし!
それ終わってもまた一年生が出る種目がやったりと時間が合わないから大丈夫!
「ふゆりちゃん!桜宮くん頑張ってー!!」
「紗奈さん!頑張ります!」
笑顔でそう言われれば私はもちろん。周りでその笑顔を見ていた人は顔を真っ赤にしてしばらく硬直していた。
ふゆりちゃんその笑顔はもう凶器でしかないよ。
そうしてふゆりちゃん達を応援して私と美優はリレーで頑張って…また碧くんを応援しての繰り返しだった。
そして応援合戦の時間をした。
応援合戦をする人は衣装を着替えないといけない。
衣装は女子はチア服、男子は学ランというのが決まっていたが、美優はリーダーなので学ランで旗を持って応援をする。
衣装着替え終わった後、美優の学ラン姿がとてもカッコよくて一緒に写真を撮ってもらった。
そんな美優は応援合戦が終わった後、すごい写真をねだられている。
美優は断りきれないので片っ端から一緒に写真を撮ったりしている。
かくゆう私も何故かたくさんの人にツーショットや普通に私を撮らせてくださいと言われたくさん写真を撮っている。
こんな私と写真を撮ったり私だけの写真だなんて絶対いらないでしょ?って聞くけどみんな「そんなことないです!家宝にするので!!」と早口で言われた。
なかなかこの写真撮ってくださいブームは終わりそうにない。
幸い今はお弁当タイムなので次の種目が遅れるということはない…。
けど、これは多すぎるよー!!
「紗奈ちゃん!!」
この声は…。
「碧くん!」
「一緒にお弁当食べよ」
「うんいいよ。でも今みんなと写真撮ってて」
この人たちを断るのも…。
「皆さんすみません。僕紗奈ちゃんと一緒にご飯が食べたいので、写真はあとにしてもらってもいいですか?」
「うん!全然いいよ!!」
「一緒に楽しくご飯食べておいで!!」
そう言って今さっきまでたくさんの人がいたのは嘘のように誰もいなくなった。
「碧くんすごい…。魔法使ったみたい」
「そんなことないよ。お願いしただけだし」
それがすごい…。
「場所とったのでそこに行きましょ!」
「分かった!」
お弁当を持って碧くんがいる場所に座る。
「「いただきます!」」
うん!美味しい!
「あっ!そう言えば碧くん。最初のリレーの一位おめでとう!」
「えっ!ありがとう!」
「本当はもっと早くいいたかったけど…人が多すぎてだめだった。でもすごいね!一気に一位になるんだもん!」
「それは紗奈ちゃんの応援が聞こえたからだよ」
「え?」
「紗奈ちゃんの応援聞いたら頑張ろう!って思て気づいたら一位になってた」
「ふふ。そんなことあるんだね。少しでも役にたてたようで良かったよ」
「うん!すっごく役に立ったよ!」
「なら良かった」
「それと…紗奈ちゃんと一緒に写真撮りたいんだけどいい?」
「うんいいよ!私も撮ってもいい?」
「いいよ!」
そうして私達は写真をお互いに撮った。
「ありがとう」
「こちらこそありがとう一緒に写真撮れて良かった」
そうしてお弁当を食べ終わりまた写真をたくさんの人と撮った。
❅•❅•❅
『優勝は……三組!!』
「「「「わぁーー!!!!!!」」」」
午後の種目も終わり優勝が発表された。
そして私たちのクラスは優勝した!
みんな頑張ったので優勝できて本当に良かった。
「三組〜優勝旗と一緒に写真撮るぞ〜!」
先生がそう言いみんな一ヶ所に集まって写真を撮った。
負けてしまったクラスもみんな笑顔で運動は苦手だけどみんなで一緒にこうやって笑顔になれる体育祭は好きだなっと改めて思った。
そのあとは何もないのでみんな帰ることになる。
いつもより帰る時今後早いのでみんな喜んでいた。
私もいつもと同じように碧くんと帰ろう!
「碧く…「碧くん!!一緒に帰ろー!!」」
そう話しかけた子がいた…。
その子はとても可愛くて、碧くんと一緒にいてもお似合いとしか言いようがなかった…。
碧くんもきっとあの子と一緒に帰るはず…。
私は碧くんにバレないように一人で帰り道を走った。
でも、足が引っかかって転けてしまった…。
「うぅ…。どうしてこうなんだろう」
私は立つ気力すら無くなっていた。
「私なんでこんなに泣いているの?」
碧くんと一緒にいたかったから?
碧くんがとられたと思ったから?
碧くんのことが……好きだから?
"好き"。私はそんな感情わからない。まだしたことないから…。
だけどこの碧くんに対する感情が恋だというのなら納得できる。
私気づくの遅すぎだよ…。
ふゆりちゃんや美優の恋を助言しといて自分の恋に気づけなかっただなんて私バカだな…。
「紗奈ちゃん!!」
この声は碧くん!
逃げなきゃ…。逃げなければいけない。
そう私は立ち上がって走った。
だけど、私の走る速度は遅くすぐに碧くんに捕まってしまった。
「紗奈ちゃん心配したんだよ?待ってても来なかったしそれにこんなに泣いているしどうしたの?」
「碧くんには関係ない!私のことなんかもうほっといてよ!」
そんなこと言いたかったはずではなかったのに口からはスラスラと出ていく。
あぁ…。余計嫌われたな。
「関係なくないよ。それに私のことなんかとか言わないで」
「…でも碧くんには関係ない!他の可愛いこと一緒に帰ればいいよ!もう…ほっといてよ…」
泣いてはだめ。そう分かっているのに…。
「ねぇ紗奈ちゃん。それって嫉妬でいい?」
「なっ!違う!嫉妬…じゃないもん!」
「もんって可愛いね」
「可愛くなんかない!碧くんの方が可愛い」
「そんなことないよ」
「そんなことある!碧くん可愛いし優しいし勉強や運動もできてそれに人気あって…だけど私は可愛くもないし勉強も運動もあんまりできてない…人気もないしこんな私が碧くんのことが好きだなんて言えない…」
「紗奈ちゃんそれ告白だよね?」
「あっ!忘れて!」
恥ずかしくて前が見れない。
「紗奈ちゃんは他の子に嫉妬しちゃうくらい僕のことが好きなんだ〜?」
「違う!」
「そんなこと言わないで」
「でも…もう仲良くできなくなったらやだもん。碧くんと仲良くできないなんて私もうだめになちゃう」
「仲良くできないなんてことないよ。だって僕も昔から紗奈ちゃんのこと好きだし」
「ふぇ?嘘…」
「嘘つくと思う?僕、紗奈ちゃんに一目惚れしてこの学校に入ったくらい紗奈ちゃんのことが好きなんだよ」
「ほんと?」
「ほんとだって。紗奈ちゃんは僕のこと好きじゃない?」
「うんん。私碧くんのことが好き」
「これから恋人同士だね」
「うん…!」
「これからよろしくね僕の妖精」
「これからよろしく私の妖精」
そう私達は微笑みあった。