「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

「なんでそのスイッチを押したかな……」

 ニーナの、げんなりした顔を見たアレクサンドラは

「何かあったの?ニーナ」
「あったなんてもんじゃないです」

 もはや、貴族と平民という超えられない絶対的な壁はあれど「同志」の間柄になって仕舞えば、そんな壁など安易と超えてしまう。

「あのヘタレ王子は、リーゼ様に推し萌えスイッチを押したんですよ」

 もはや、ニーナがエドヴィン王子をヘタレと呼ぶ事は、このコミュニティの中にいる間は誰も気にしない。
 むしろヘタレと呼ばれた本人ですら、いつの間にか馴染んでいる程。

 そんなこんなで、アレクサンドラも

「一体ヘタレのどのスイッチを押したの?」

 と、普通に返事をしていた。

「見てください、あれを」

 ニーナが指差した先は、ぱああああっという擬音が頭中にちりばめられていそうなリーゼが、目をギランギランさせながら、身振り手振りで何かを説明しているところだった。
 そしてエドヴィン王子は「へえ、そうなんですか」と相槌を頑張っているようだったが、何を言っているかきっとちんぷんかんぷんだったに違いない。

 ところどころニーナとアレクサンドラの耳に入ってくるのは

「二次元の嫁はいくらいても浮気にはならない」
「あの作家は神よ神」

 といった、ちょっとよく繋がりがわからない単語と単語の組み合わせ。
 それも、リーゼはものすっごい早口で話しているため、全部聞き取るのもなかなかしんどい。
 慣れているニーナでさえそうなのだ。
 アレクサンドラはともかくエドヴィン王子に至っては、もはやただの壁と化する他なかった。