「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 これは、もしかしなくても俺のことを……?エドヴィン王子は期待を込めて

「つまり、殿下のことがお好きなんですか?」

 と尋ねようとした。
 が、そういう時に限って邪魔というのは入るもの。

「殿下、いい加減そろそろ」

 待ちくたびれた侍従の1人が声を出してしまったのだ。
 空気を読んでいた別の侍従が

「おい」

 と急いで止めはしたのだがそれはもう後の祭りで

「殿下がいらっしゃるのですか?」

 リーゼはキラキラした目で周囲を見渡した。
 そこでちゃんと名乗れば、こんなことにはならなかったにも関わらず、エドヴィン王子は急に、自分がエドヴィン王子としてこの後話しかけることが恥ずかしくてたまらなくなった。

「で、殿下はもうあちらに向かわれてしまいました!」

 そう言いながら、空気を読んだ侍従と読まない侍従を抱えて、エドヴィン王子はリーゼの元から走り去ってしまった。

 これがリーゼとゆっくり話したエドヴィン王子の記憶。
 そして、ますますリーゼを好きになった、単純極まりない動機の1つ。