「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

「どういうことだ!」

 エドヴィン王子は、侍女に変装したアレクサンドラをリーゼから引き剥がし、コソコソと、だが自分では圧力をかけたつもりで問い出した。

「どういうこと、とは?」
「予定では、城で留守番するはずだったろう」
「殿下に任せておける程、私は殿下を信用していませんので」

 間髪入れずにバッサリと、アレクサンドラは斬る。

「だったら始めからついていく!と言えばいいだろう」
「そんなこと言ったらつまらないじゃない。あなたのその、たぬきさんよりもお間抜けなお顔が見られないじゃない」

 ほんと、そういうとこが嫌だ!とエドヴィン王子は全力で顔だけで表現したが、アレクサンドラは一切スルー。

「そ、それにだ。リーゼ嬢は何故俺の顔が分からないのだ?あんなに近くにいつのに」
「え、それこそ、おにぶすぎじゃありませんこと?何のためにリーゼ様がメガネというガラスの高級品をつけていたとお思いですの」
「確かに、少し目が悪いことは聞いてはいたが」
「少しどころじゃなりませんわ」
「え」
「今、リーゼ様の目に映っている殿下は、のっぺらぼうなのです」
「そ、そこまで!?」
「そう。ニーナから聞いて驚きましたわ。でも、だからこそ納得したこともいくつかあるわけですけれども……」
「納得したこと?」
「それは、後でお話ししますわ。それよりも!」

 アレクサンドラはビシッとエドヴィン王子を指差しながらこう言った。

「今、あなたという肉体をリーゼ様は目では認識できない状況なのです。それを利用しない手は、ないんじゃなくて?」
「そもそもその前に、どうしてそんな状態に?」
「…………」
「何故黙る」
「…………足元に転がっていたのが悪いんですわ」
「お前が壊したのか」
「違いますわ。作戦ですのよ。これでも」

 おほほほほという高笑いが、嘘をついているときによく使うものだということは、きっとアレクサンドラに騙され続けてきたエドヴィンにしか気づかないんだろうな〜……とため息をつきたくなったエドヴィン王子だった。