「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 もう、何を話しかけても、うんともすんとも返事してくれない程の、驚異的な集中力を発揮し始めてしまったリーゼを置いて、エドヴィン王子とアレクサンドラは談話室に置かれたソファで、それぞれぐったりと倒れ込んでいた。
 まるで屍のようだ、と言う言葉が似合いそうな光景に、ニーナはほんの少しだけ込み上げてきそうな笑いを、無理やり唾で飲み込んだ。
 こんな様子を国民が見たら、この2人への印象がガラリと変わるんだろうな……いい方に転ぶのか、悪い方に転ぶのかは分からないけれど。
 そんなことを考えながら、ニーナは、本来自分の仕事ではないはずなのだが

「どうぞ」

 と、紅茶を出した。
 きっと城の誰もが、ゾンビのような2人の姿を見たいとは決して思わないだろうと、ニーナがわざわざ城の使用人に気を遣った結果だった。
 エドヴィン王子は、すぐさま紅茶の香りに気付き、のそのそとティーカップに手を伸ばし口をつけた。

「……うまいな」
「お褒めいただきありがとうございます」

 お、この王子、いいやつだ。
 ニーナの中で、エドヴィン王子の株が上がった。
 理由は、いつもリーゼに出しても冷めるまで口すらつけてくれないから。
 しかも。

「城のやつが淹れるのも悪くはないんだが……今まで飲んだ中で1番うまいぞ。これは。茶葉はどこのものだ?」

 社交辞令なのか本気なのかの判断は難しいが、自分の仕事をちゃんと口で味わい褒めてくれた。
 それに比べてリーゼは……思い出すだけで悲しくなるので以下略。

「実はですね、こちらの茶葉を使わせてもらったのですが……」

 ニーナは、恐る恐る自分の技術を説明してみた。
 リーゼや、ブラウニー家に説明しても誰も興味を示さなかったお茶を淹れる秘技を。
 するとエドヴィン王子は

「そうなのか」
「すごいな」
「へえ」

 と、ニーナの言葉1つ1つに、丁寧に相槌を打ってくれる。
 この人、推したい……!
 顔は全く興味がなかったのに……!!
 そんな風に思いながら、ニーナは意気揚々と語りまくっていた。