「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 そんな中、ただ1人リーゼだけが幸福の極地にいた。

 一目見た時からずっと推して、推して、推し続けた麗しい男性が、目と鼻の先にいる。
 少し近づけば、毛穴までしっかり観察できそうな距離。
 それだけでも息は荒くなり、心臓は痛みすら感じるほどのものすごいスピードで鼓動している。
 ただ見るだけであれば、これまでにもその機会は多々あった。
 そこそこの家柄で、野心のかけらもないブラウニー家ではあるが、腐っても貴族。そして裏では変人娘と言われているリーゼはその令嬢なのだ。
 舞踏会などの交流会で会話をする機会だって、普通にこれまでもあった。
 だが、今はどうだ。
 ただ、会話しているだけじゃない。もちろん、見るだけでもない。
 今まではただの彫刻でしか使えなかった、エドヴィン王子への推し愛から生まれた洋服作りのスキルを、まさに今本人のために披露することができている。
 それに、木の硬い肌ではなく、ちゃんと有機物として呼吸している生肌に触れて、筋肉の柔らかさと逞しさを、自分の掌でしっかりと受け止めることができている。

(な、なんて吸い付くような肌……!ツヤツヤで、すべすべで、それでいてしっかりと良い筋肉……!ああ、この触感を表現するには一体どんな材料で作ればいいのかしら……!はわああああああ!!!!)

 そんな事を考えながら、リーゼはせっせと縫い物を仕上げていく。

(女性よりも美麗で品が良いエドヴィン殿下であれば、もっと繊細なデザインもお似合いかもしれません……が、やはり。この寝巻きを初めて着る時は、アレクサンドラ様とのベッドでの一夜にしていただきたいわ……!待ちに待った瞬間ですもの。湯浴みから出たら、獣のようにアレクサンドラ様の首筋に噛み付くようなキスをして、そのまままず、ご自分の寝巻きを破り捨ててしまうとか……そんなシチュエーションをこの手で演出できたら、最高に滾るわ……!あ、胸元からちゃんとビリって破けるように、わざと切り込みを入れておこうかしら。殿下が破いた瞬間にこぼれ落ちる胸筋とか諸々のポロリ……はああああああ興奮するしかない!!!後でしっかり紙に書き留めておかなくては……)

 こんな妄想を、リーゼは淡々と職人も驚きの速さで縫い上げていったのだった。