「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

「…………殿下」
「言うな」
「では……ぷぷぷ」
「笑うな!言うなって言ったからって、笑うな!!」
「2度も同じことをおっしゃるのは、言語センスがない証ですわよ」
「っ!!!」

 ぽつんと、ダイニングに取り残された哀れな策士2名がついさっきまでリーゼがいた空席を眺めながら、ため息をついた。
 アレクサンドラはあくまで上品に。
 エドヴィン王子は地獄の底から湧き出てきたような息だった。

「作戦に、自信があったのではないですか?」
「実際、彼女は喜んでいただろう!?」
「味は、ですけど。でもどちらかと言いますと、その後の方がリーゼ様のお目目はとても輝いていましたわね」

 その後というのは言わずもがな。

「いや、彼女の、美に関する知識とこだわりは素晴らしい。ますます国の宝とも言える王妃にふさわしいと言えると、思わないか?」
「思ってるからこそ、こうして面倒くさくて仕方がないことにお付き合いしてあげてるんじゃないですか。それを無駄にしたのは、殿下、ですわよ」
「お、俺が何かしたわけじゃ」
「結果的に心を掴めなかったのだから、同じことでしょう」

 ただ、それだけであればアレクサンドラまでダメージを受ける必要はない。
 去り際にリーゼが残した言葉が、問題だったのだ。

「それでは、邪魔者は失礼しますわ。ふふふ」
「え、ちょっとリーゼ様!?」

 アレクサンドラが止めるのも聞かず、リーゼはそそくさと立ち去ってしまったのだ。