「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 午前中に2つの試験を終えた後、待ちに待ったティータイムがやってきた。
 この時間内で、これまでの成績をまとめ、上位3名のみ最後の試験である面接試験に進めるという流れになっていた。
 と言っても、この試験はエドヴィン王子が裏で画策しまくった結果開催された、リーゼを公式に婚約者にするためだけのもの。
 この選ぶ時間すら、茶番でしかなかった。
 だが、その事実を知っている令嬢はいない。
 ほとんどの令嬢達は、自分こそが王子の婚約者として相応しいと、本気で思っていた。
 だから、本命と言われているアレクサンドラには手を出せなかったとしても、全くの範疇外であるべき、冴えない芋娘であるリーゼが目立った活躍をしていたとしたら……もちろん、黙っているわけにはいかないのが、女のさがというもの。

「ちょっと!」
「はい?」

 ティータイム用に出されたスコーンを頬張りながら、先ほど目に焼き付けたアレクサンドラの美しさを忘れてはいけないという使命感にかられ、ひたすら持ち運んだスケッチブックにアレクサンドラの絵を描き殴っていたリーゼに、複数の令嬢達がいちゃもんをつけにきた。

「なんなのよさっきのは?」
「さっき、とは?」
「とぼけないで!あんたみたいなグズが、何でこんなに活躍してるのよ?」
「そうよそうよ!」

 そんなことを言われたとて、リーゼには何一つ響かない。
 何故なら、リーゼにとっては自分の活躍などは一切なく、あくまでもアレクサンドラをサポートしただけだと、本気で信じているから。
 令嬢達の言葉が何一つ響かないリーゼは、一瞬だけ「うーん……」と考えたものの、すぐに

「あの、何を言っているか分かりませんので、こちらの作業に戻ってもいいかしら?」

 とスケッチブックを令嬢達に見せた。
 もちろん、そんな風にバカにされた令嬢達は、そんなことを許すはずもなく……。

「ちょっと!何をするの……!?」

 この数時間でリーゼの頭のシャッターを押しまくって脳内に保管しまくったアレクサンドラの美しい姿が記録されたスケッチブックを、令嬢達がやすやすと奪っていった。

「こんなもので誤魔化そうだなんて、そうはいかないわ!」

 そう言って、令嬢の1人がスケッチブックを投げ捨てようとした時だった。

「一体何しているの?あなた達は」
「あ、アレクサンドラ様……!?」

 何を考えているかは外からは一切見えないポーカーフェイスを貫きながら、アレクサンドラがリーゼと令嬢の間に割り込んだ。