それから1年後。無事にリーゼを連れ帰り、そのまま結婚したエドヴィン王子は、幸せすぎる新婚生活(?)の合間に公務を頑張っていた。
 ちょっと前に生まれた、自分そっくりの男の子はウィリアムと名付けられ、エドヴィン王子はデロンデロンに可愛がっていた。
 今日も、公務先で見つけたおもちゃを片手に、ウキウキるんるんとスキップしながら、エドヴィン王子は城へと戻ってきた。

「帰ってきたよ〜俺の可愛い妖精さん達……げっ!!」
「今日も相変わらずぶっさいくな顔で戻っていらしたのね」

 リーゼの部屋に駆け込んだ瞬間、エドヴィン王子が見たくもなかった濃い顔が中心にいて、一気にテンションもあそこもしゅんっとなった。

「だから、毎度毎度、どうしてここにいるんだ!アレクサンドラ!」
「あら、お友達に会いに来る事のどこが悪いのかしら」
「毎日来てるじゃないか!俺がリーゼとイチャイチャできないのを良いことに」
「仕方がないじゃない。だって、リーゼ様に呼ばれるんだもの。ねえ、リーゼ様」

 アレクサンドラの視線の先には、ベビーベッドが並べられており、そこに2人の赤ちゃんが横たわっていた。
 1人はエドヴィン王子そっくりなウィリアム。もう1人はアレクサンドラが産んだばかりの女の子、スカーレットだった。
 ダーリンとの子なはずなのに、恐ろしいことにスカーレットにダーリンの要素がまったく入っておらず、アレクサンドラの容姿そのものだった。
 ということで、リーゼがこの2人に夢中になることなど、想定の範囲内だったりする。
 今現在、お昼寝中の「推しカプ」のスケッチに集中していた。

「まさか本当にアレクサンドラもすぐに妊娠するとはな」
「だって、あなたと結婚しなくて良くなったら、すぐにでもダーリンと結婚式したかったんですもん。それより可哀想なチンアナゴさん。帰ってきても最愛の妖精さんに気づいてもらえないなんて……もう、あなた、リーゼ様の推しじゃなくなったのでは?」
「なっ!?そ、そんなことは……」

 エドヴィンは、よろよろ歩きでリーゼに近づいた。

「マイハニー、俺の事もちゃんと推してるよな?」
「すみません、推しが起きるのでお静かに」
「なっ!!!」

 エドヴィン王子の最近の悩みは、新たな推しカプにリーゼが夢中になりすぎて、たまにリーゼが塩対応になることだった。
 ただ、エドヴィン王子は、そうされた後は仕返しとばかりに夜が激しくなるので、ある意味おあいこだったり。
 ちなみに現在リーゼは再び妊娠している。

「本当に毎日毎日、同じやり取りの繰り返し。皆様飽きないですね」
「あら体調、またやつれたんじゃなくて?ちゃんとご飯食べてるの?」
「誰のせいだと思ってる。誰のせいだと」

 ニーナも、リーゼ付きの侍女として城勤務になった。
 これでたんまり稼いで、貯金で不労所得を楽しむぞ!と気合い入れたものの……

「ニーナ、アレクサンドラをどうにかしてくれ」
「隊長、私がいないとリーゼ様は悲しみますわよね」
「あ、ニーナどうしよう。鉛筆が足りなくなって」
「「うわーん!!!」」

 現在、ニーナがお世話しないといけないのは何故か5人。
 そして来年もう1人……下手すると2人に増えているかもしれない。
 このままでは、不労所得生活の前に過労死フラグだ、とニーナは思っている。
 だが。

「ま、私の推し達が幸せならOKです」
「何か言った?ニーナ」
「いえ、別に」

 ニーナにとっては、推しカプが現在3組。
 これから4組になるかは分からないが、推しが幸せなら自分も幸せだと言う、リーゼの気持ちが最近ようやくわかってきたニーナだった。 

おしまい