まあ大体こうなるだろうと、この企みを決めた時から予測していたニーナは、しっかりとリーゼお気に入りのもふもふ部屋着を片手に、扉の前にスタンバイしていた。
 なので。

「来た」

 とニーナが言った瞬間、勢いよく扉が開き、スッポンポンの主人が飛び出してきた。
 まさかここまで予想通りだとは。
 自分の未来予測能力の賜物なのか、単にこの変態令嬢のぶっ飛び行動に慣れすぎただけなのか。ニーナは自分の有能さにうっとりしながら

「はい確保ー」

 と、暴走列車をしっかり捕まえ、ささっともこもこを着せて露出事故を一瞬で防いだ。

「に、ニーナ!私、私!」

 リーゼはニーナの胸に顔を埋めて、えぐえぐと泣き出した。

「はいはい、話は後でしっかり聞きますから」
「どうしましょう私……!!」
「落ち着いてくださいませ」

 そうニーナが宥めたタイミングで、ニーナは主人を泣かせた(厳密にはちょい違う)原因が扉の側に立っていたのに気づいたので、視線だけで「余計なことを言うな」と合図をした。相手のチンアナゴ(とはちょっと違うとニーナは思っているが)はこくりと頷いた。

「ニーナ!早く家に……家に帰らなくては……」
「何をそんなに慌てているのです」
「だって、私が……」
「はい」
「推しが結ばれるという世紀の瞬間を邪魔したとか!!処刑ものの失態をしてしまったわ!!」

 ニーナは、さすがリーゼだなと吹きそうになったが、すでに地獄の奥底に叩きつけられたようなチンアナゴを見て、冷静さを取り戻した。

「その件については、とりあえず私の方でちゃんと処理しますから」
「本当に!?」

 どう処理する気だ、と訴えるような視線をチンアナゴは送ってきたが「良いから黙っとけ」と言いたげな視線をニーナは送り返してから

「1度お家に帰りましょうか。色々作戦会議もしなくてはいけないですし」

 その作戦会議の中には、誰の、何のためのと言う内容はあえて入れないニーナだったが、リーゼは

「エドアレ派に知られたら……私……もう薄い本作らせてもらえないかもしれない……」

 とぶつぶつ言いながらニーナに従った。
 ちなみに、ニーナはというと、リーゼの肩を抱きながら寝室前から去る時にチラリと、呆然と立ち尽くすチンアナゴを見てこう思った。
 ちょっとだけ意趣返しはできたけれど、流石にやりすぎたかしら、と。
 エドヴィン王子は期待満々で眼鏡を取り替えたものの、リーゼがどれほどエドアレを全力推ししていたかをニーナは数年、嫌と言うほど見続けてきた。
 見事に、ニーナが「まあこうなるだろうな」と思った通りの結果になったのだった……。
 ちょっとだけスカッとした。
 だから、もうニーナからチンアナゴへの意地悪はこれで終わり。
 ここから先は、自らの不労所得と、可愛い可愛い主人&主人候補のために動いてやろうかと、次の作戦をニーナは考え始めたのだった。

「リーゼ様、今日からお腹は冷やさないでくださいね」
「え、どうして」
「女に、お腹の冷えは大敵ですからね」