「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 一方のリーゼは、どうしようもなく襲いかかってくる「熱」に困惑していた。

「どうしました?」

 優しい彼の声が耳元で囁かれる度に、リーゼはこの熱のことを言うべきか迷った。
 心地よくて仕方がない……でも体が疼いてしょうがないという、初めて味わう感覚で、自分がおかしくなりそうだった。
 でもそれを言ってしまうと、彼が離れてしまうのではないかと怖くもなったので、リーゼは

「大丈夫です……」

 と微笑み返すだけにした。
 そうして、またお互いの体を覆い隠す服越しに、体温と肌を感じ合う行為を繰り返す。
 腕をさすってみたり、少し胸元に顔をうずめてみたり。
 その度に、リーゼの体の奥はこの男と1つになりたいと、リーゼの理性に訴えかけてくる。
 男(もちろんエドヴィン王子)が、露出している肌の部分に触れる度に、ぴくぴくと反応してしまい、リーゼは自分の思い通りにならない体が恥ずかしくて堪らなくなった。

「ご、ごめんなさい」
「何故謝るのです?」
「だ、だってこんな……変でしょう?」
「ちっとも」

 そう、優しく囁く声が、耳元でセクシーに響くので、リーゼはゾクゾクしてしまう。
 どこかで聞いたことがある声だったかも、と、脳内リーゼが一瞬疑問に思ったものの、まさかそれが推しカプの片方であることなど、全くもって予想すらしていなかったリーゼはその考えを無視した。
 ああ、服が本当にもどかしい。
 もっと、この人に触れたい。
 肌に触ってみたい。
 あの二人もきっと、そんな風に抱き合ったのかしら……?
 もしこの方とあんな関係になれたら、推しを愛でる薄い本にもリアリティが生まれるのかしら?
 ああ、それも素敵だけどそんなことより、もっとこの人の全てを味わってしまいたい。
 などなど、あれやこれやとリーゼの考えが散らばり始めた時だった。

「ごほん、リーゼ様」
「そ、その声は……ニーナ?」

 視力があまりないリーゼは、ニーナの声なのにドレス姿をしている女性の影に驚いた。

「はい、ニーナです」
「本当に?」
「……ええ、まあ疑うのは色々わかりますが」
「そのツンな口調は本人ね」
「……うん、まあそれは良いとして」

 そう言うなり、ニーナと名乗ったドレス姿らしき女性の影はリーゼと男の間に入り込みながらこう言った。

「もういっそのこと、寝室でお休みになったらいかがですか?」