「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

「も、申し訳ありませんがアレクサンドラ様……?ご両親が……王様王妃様ご夫婦を連れ出してるとは、一体……」
「適当な理由つけて、視察に連れ出したのよ」
「あー…………」

 そういうことすらできてしまうお家柄?関係?なのがアレクサンドラなのだと、ニーナは改めて思い知らされた。
 つくづくニーナは思った。こいつが本物の悪女じゃなくて、ただのエロ令嬢で。
 こいつが本気で悪いことをしようとしたら、この世界はどんなことになるのだろうかと、ニーナは想像しかけてすぐやめた。寒気だけでは済まなそうな気がしたから。

「そんなことより、あれ」

 アレクサンドラはセクシーなニヤリ顔を見せながら、ある方向を指差した。
 窓の向こうにあるバルコニーで、目に当てられないくらい、いちゃいちゃべたべたべたしているリーゼとエドヴィン王子(ただしリーゼは知らない)がいて、ニーナはげんなりした。
 目的には近づいているはずなのに、見れば見るほどムカつくのは何故だろうか、とニーナは気持ちと理性のアンバランスさに疲れ始めていた。
 そのうち1つだけは言語化できてはいた。主にエドヴィン王子に向けて。
 てめえそれを素顔晒して言えや。覆面被ったようなもんだからって、己の欲望解放させすぎなんだよ。……もちろん、心の中でだけだけど。将来の金蔓の機嫌は取っておくに越したことは、ないから。
 にしても。

「……アレクサンドラ様。あれはさすがにうざくないですか?」
 
 あ、言ってしまったとニーナは思ったが、アレクサンドラが「私の成果を褒めて」と言いたげな表情になったので……まあいっか、と開き直った。

「当然よ。私の香水を、チンアナゴの服に擦り付けてやったんだもの」
「と、言いますと?」
「これよ」

 アレクサンドラが、ドレスの胸の谷間からひょいっと小さな瓶を取り出した。

「嗅いでみる?」

 ここまでの流れで、すでにこの香水に何か仕掛けられているのは察したニーナは、丁重にお断りしながら「成分は何ですか?」と話を逸らした。

「さあ、わからないけど。これ使うと盛り上がっちゃうのよ、ねえダーリン」

 その一言で、もう確証を得たので絶対にニーナは使わないと決めた。
 少なくとも今は。

「それで、媚薬まがいの香水を擦り付けたおかげで、リーゼ様があんな……雌の顔になってるわけですね」
「そうそう」
「とはいえ、あれあのままで大丈夫ですか?殿下の手の位置、あのまま下の方に行くとまずいのでは?」
「……もう、ベッドに行ってもらおうかしら」
「踊ってないのに?」
「必要ある?」
「確かに」

 この舞踏会の目的は、あくまでもあの二人を公式にくっつけてしまうこと。
 それさえクリアできるなら、ハリボテ舞踏会でも十分なのだ。
 
「じゃあちょっと早いけれど、作戦決行しましょ、隊長」
「ですね」

 でないと、下手すると主人の裸が曝け出されてしまう。
 それはさすがに、できるメイドである自分の矜持が許さないと、ニーナは思った。