「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 ニーナは、周囲を急いで見渡した。
 アレクサンドラはこの国で王族の次くらいには高貴な存在なのだ。一応、これでも。
 中身をある程度知ってしまったニーナでさえも、アレクサンドラという人間の行動……例えば身につけているファッションがこの国の貴族社会にどれだけの影響を及ぼすかは把握している。
 そんな人間の口から「セックスフレンド」という言葉が出てきたなんて、他の貴族に知られたら一大事だ。

「大丈夫よ、誰もいないわ。だってダーリンが追い払ってくれたんですもの」

 アレクサンドラはニーナの心配事などお見通しと言いたげな表情で、エドヴィン王子の格好をした筋肉ムキム騎士に寄り添った。

「あの…………ではお聞きしますが…………せっ……セックスフレンド、というのは?」
「本当は、私の旦那様になってほしいのだけど」
「……ほう?」
「彼が、自分では不相応だって言うんだもの」
「………………ほう」

 ニーナが視線を向けると、筋肉ムキム騎士は咳払いをしてから

「その……私なんかがアレクサンドラ様のお相手などと申し訳なく……」

 申し訳ないくせに、ヤルことヤッてんじゃねえかよ、というツッコミは喉から出そうになったのを無理やり飲み込んだニーナだった。

「それでぇ、ダーリンが、お友達だったらいいよって言うのだから」
「だから、セックスフレンド、ですか」
「そうよ」

 ああそういえば、アレクサンドラ様が読むような激甘恋愛小説にはセックスフレンドの類のテーマはなかなか書かれていなかったな……と、ニーナは色々察したが、あえて何も言うまいとツッコミすることはやめて、その代わり

「もう、この体で押し倒された後、気持ちよくされるのがたまらなく」
「はいはいストップストップ。後で聞きますから」
「特に、彼のアソコが胎内に入ってくる時とか」
「まだその手の話は早いですよーシラフでする話じゃないですー」

 と、アレクサンドラが公共の場で性的事情を暴露しそうになるのを抑えることだけにまずは専念した。
 筋肉ムキム騎士は、自分のアレをアレクサンドラが誉めたのが嬉しかったのか、ニーナからすれば「きんもっ」と言いたくなるようなデレデレした表情でアレクサンドラを見つめていた。