「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

「んまああああ!!よーくお似合いですわ!!!」
「…………あ、ありがとうございます………………」
「……………………リーゼ様、お伺いしても?」
「なあに?ニーナ」
「……………………どーして、私の後ろにいるんです?」
「え?」
「だーかーらー、どうして、リーゼ様の推しが目の前にいるのに隠れるんです?」
「推しがいるから隠れるんじゃない!!わからないの!?」
「わかりません!」
「推しとの距離は取ってじっくり観察することが醍醐味なの!」
「ほんとそれ意味わかりませんから!」

 これがどういう状況かと言うと。
 ここ数年で最も、きちーんと舞踏会用の妖精さん仕様に、ニーナがここぞとばかりに整えたリーゼ(ただしメガネはまだ見えづらいやつ)を連れて会場のダンスホールへと向かっている時に、アレクサンドラと偶然遭遇したのがまず最初。
 リーゼは、アレクサンドラの香水の嗅ぎ分けは誰よりもできる(と本人は思っているが、実際は気づかなかったケースも多々あり)と自負していたので、ぼんやり視界でもすぐに気づいてしまった。
 ちょうど、リーゼとアレクサンドラがバチっと目が合った(ただしリーゼは気づいていない)時に、しょっぱらからアレクサンドラが、らしくないテンションで話しかけた結果の、なぜかリーゼがニーナの背後に隠れてしまった……というのが冒頭の会話だったりする。
 そういえば、とニーナはふと思い出した。
 自分はもう、アレクサンドラから「隊長」「姉御」などと呼ばれまくっていたから距離が近くても違和感が何一つなかった。
 だが……考えてみればリーゼは違った。
 自分たちはストーカーのごとくリーゼとエドヴィン王子を追いかけ続けていたから、リーゼとアレクサンドラの本来あるべき距離感をすっかり忘れていたのだった。
 ニーナは、アレクサンドラに目配せした。
 声は出せない。
 ただ、ニーナは視線で伝える。
 お前、どうすんだよこの事態を、と。
 アレクサンドラは、パチンとウインクをした。
 OK、任せて、と言ってくれているとニーナは信じた。
 信じて、次の言葉を待った。
 待った。
 待っ…………たけれども………………。
 それから、数分ほど、誰も何も言わず行動せずの時間が無駄に続いたのだった。