「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

「さて、どうしたもんか」

 ニーナはこの舞踏会の為に、裏でこっそり仕入れた特別なドレスを、部屋の壁に掛けられた装飾的なフックに掛けて、全体を確認した。
 ちなみにこのドレスは、アレクサンドラ御用達のブティックで調達したもの。
 さすがに数日でオートクチュールの発注は無理だった。
 だが、ありもののドレスのリメイクであればギリギリ間に合うということだったので、アレクサンドラも交えて相談をした結果、今朝太陽がまだ昇らない時間帯にようやく出来上がり、ここまで運んできてもらったのだ。

「こんな無茶な注文、二度とごめんですわよ!!もうっ!」

 恨み言を言うトップデザイナー(雄)はいつものご自慢のツヤサラカツラが中途半端にずれていることにも気づかず、金を要求してきた。

「これから王家御用達にしますので、それで、なんとか」

 と言いながらニーナは、アレクサンドラから預かった、自分では決して手にすることができない大金を雑にデザイナーに渡した。

「んーもうっ!しょうがないわね!!」

 やはり、世の中は金。
 さっきまで「呪ってやる〜〜〜〜〜」オーラが出まくっていた背中から後光がでているのではないか、と錯覚するほど、デザイナーはスキップして帰って行った。

「さてと」

「今朝は用事があるから任せた!」と1番大事な準備をアレクサンドラはニーナに丸投げしてきた。
 まあそれはいい。
 対価としてたんまりいろいろもらうことを約束しているのだから。
 ニーナは、受け取ったドレスを一通り確認し、アレクサンドラが「必ず入れなさい!」とデザイナーを脅して作らせた要素がしっかり入っていることも、ちゃんと確認した。
 問題ないことを確認したニーナは、そのドレスを一度自分の部屋に持っていき、最後の仕上げをしてから、リーゼの部屋に持ってきたのだった。

「ニーナ?壁になにがあるの?」

 リーゼが風呂上がりの、ほぼ半裸に近いバスローブ姿で出てきた。

「今日着ていただくドレスです」
「ん〜……よく見えないわ…………早くメガネが直るといいのだけど」
「安心してください。明日には届きますよ」
「本当に!? 楽しみだわー!」
「ええ、本当に」

 楽しみですね、と腹黒い笑みを浮かべながらニーナは返事をした。