「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 その日の夜、再びのエドヴィン王子執務室での秘密会合にて。

「ねえ、どう思います?隊長」

 もう、ニーナはアレクサンドラに「隊長じゃないんですけど」というツッコミをするのをやめた。
 というより、それ以上のツッコミポイントが今目の前にあるため、それどころではないと言った方が正しい。

「控えめに言って、キモいです」
「そうですわよね。許されるなら吐きたいほどキモいですわ」
「やめてください。色々問題が起きます」

 こそこそではなく、堂々と普通の会話の大きさに相当する60デシベルの声でニーナとアレクサンドラは、目の前の生き物をディスっている。
 なぜなら。

「ああ……可愛かったなあ……俺の妃……」

 わざわざ窓の外の月を見るという、恋する男を演じる舞台俳優がやるような、お決まりのクサい動きをエドヴィン王子はしている。

「何あれ。俺の妃とか。もう所有欲丸出し」
「まだ決まってませんけどね」
「たかだか、庭を手つないで散歩したくらいで。これだからドーテーは」
「言いましたね。言っちゃいましたね」
「すでにあれ、イッちゃってるから問題ないわ」
「否定はしません」

 エドヴィン王子は、鼻歌まで歌い始めた。
 
「いやですわね。妄想だけできっと20人くらい子供作ってるんでしょうね」
「それは身体的に負荷がかかりすぎなので、現実では実現して欲しくないですね」
「ねえ隊長」
「なんでしょうか」
「何か、ムカつきますわよね」
「同意しかない」
「このままくっつけるのも、なんかちょっと、とんとん拍子すぎてつまらないと思わない?」
「それについては、私には別案がございます」
「何?別案って」
「人間は、中途半端にいいことが起きてから中途半端に悪いことが起きた時よりも、徹底的にいいことが起きてから悪いことが起きた方が、よりショックを受けると聞いたことがあります」
「……なるほど」
「試練は、幸せの絶頂の時にさせるのが良いかと」
「……あなた、誰の味方なの?」
「私は私の味方です」
「いいわね。そういうの大好きよ」
「私も、アレキサンドラ様の貴族なのに下品さもあるところ、好みです」

 そんな会話を、60デシベルをキープしたまま会話したというのに、当のエドヴィン王子はまっっっっっったく気づく様子もなく、リーゼとの愛を深める作戦を考え始めていた。