「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

「ああ、見て、隊長!」
「……まだ、その呼び方続くんですか?アレクサンドラ様」

 ニーナはアレクサンドラにツッコミながらも、アレクサンドラが指差す
方向を見て、驚愕した。

「なっ、何を……殿下は……」

 ニーナとアレクサンドラの目には、エドヴィン王子がリーゼを抱きしめているのが見えた。
 それも、泣き腫らしたぶちゃいくな顔で。

「どうして!?何でいきなりそうなる!?」

 ニーナは、アレクサンドラの前にも関わらず、敬語で話せなくなるくらい取り乱していた。

「何か話していたのは分かるのだけど、何を話していたかは聞こえなかったわ」
「くっ……オペラグラスに音を拾う効果があればいいのに……!」
「素敵ね!そんなものを発明した人がいたら、即金貨100枚あげるわ」

 ちなみにこの国で金貨100枚は、庶民の暮らしを維持すれば5世代くらいは働かなくても生きていける程の大金だったりする。
 ニーナが心の中で、自分が発明してやると誓ったのは、また別の話。

 そんな、二人が驚愕するようなぶっ飛んだ動きをしたエドヴィン王子だが、その裏側はこんな感じだった。
 エドヴィン王子も、自分の顔がどんなに酷いものになっているかは何となく想像はついていた。
 男として、好きな女に鼻水たれっぱなしの顔を見られたくはない。 
 だが、ここでエドヴィン王子は気づいてしまったのだ。
 ハンカチーフを、持ってきていないことを。
 つまり、拭き取ることができない。
 さらにリーゼはエドヴィン王子の顔を見ようと、目を細めてじーっと妖精のような顔を近づけてくる。
 どうする。どうするどうする。
 どうすれば逃げられる。
 そう考えたエドヴィン王子の、脳のキャパが限界突破した結果の行動だった。
 でも、その状況をもしニーナが近くにいて、アドバイスできる状況だったらきっとこう言っただろう。

「顔を背けば済む話だったのでは?」