「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 エドヴィン王子は、それなりに緊張する場面は数多く乗り越えてきた。
 他国との交渉も、国を代表して行うことも少なくない。それも、国の命運をかけたもの。
 その時も緊張はしたが、前もってシミュレーションを重ねた結果、涼しい顔で無事にクリアした。
 だが、今は涼しい顔どころか、顔身体が溶けてしまうんじゃないかと言うほど、汗だらっだら。
 汗臭いと言われたらどうしようと、ビビるくらいには、繊細な心も持っているエドヴィン王子だからこそ、なかなか次のステップに踏み出せずにいた。
 どうする。
 どうするどうする。
 エドヴィン王子が、自分の心臓の音以外聞こえなくなりそうになった時、ぽつりとリーゼが、さくらんぼ色に熟れた唇を動かした。

「昨日の……?」
「え?」
「昨日、私と一緒にいた方ですか?」

 エドヴィン王子は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になってしまった。
 自分から声をかけないと反応してくれないと思っていたので、まさかリーゼの方から聞いてくれるなんて……。

「痛いっ」
「え?」
「あ、すみません……ちょっと……」

 都合の良い夢だと言われた方が信じられるシチュエーションだったため、思いっきり自分の頬をつねったのだ。
 国宝級イケメンと呼ばれるあの、美形顔を。
 もしリーゼの視力がはっきりしていたら、発狂して泡を吹いていたかもしれない。
 
「ゆめじゃ……ないのか……?」
「え?」
「ああ、いや……何でもな……くっ……」
「あ、あの……」

 そんな様子を眺めていたオペラグラッシーズはと言うと。

「あの顔をつねられるのなんて、世界中どこ探しても殿下だけですね」
「あら。私はあんなもんじゃないわよ。口も目の端も引っ張ったりしたわ」
「前言撤回します。殿下とアレクサンドラ様くらいですね」
「そんなことより、あのヘタレ泣き始めたんだけど!?」
「水もしたたる良い男にでもなればよかったですが」
「あんなきったない泣き方、今時0歳児もしないわよ」
「0歳児見たことあるんですか」
「ああああ、あの顔でまさかあの決め台詞言う気じゃないでしょうね」
「流石に言葉が可哀想なのでやめてほしいですね」
「鼻水拭きに行くべきかしら?」
「仮にもあそこはあんな状態になれる成人男性にそれは……」
「じゃあどうするの!?1000年の恋が醒める顔になってるのに!?」
「本人は10000万年に1人の美男子なはずなんですけどね」

 そんな風にテンポよく毒づきながら、エドヴィン王子がとった次の行動に頭を抱えた。