「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました

 そんな、どこぞの少女小説的なシチュエーションでは、こんな会話がなされていた。
 ちなみに、声はにニーナにもアレクサンドラにも聴こえていない。

「あ、ありがとうございます」

 リーゼが、エドヴィン王子(変装)の胸元から顔を上げる。
 この時、リーゼの視界にはぼんやりと、体型からは男の人であることがわかるのっぺらぼうエドヴィン王子がしっかり入っている。

「いえ……」

 お目目キュルキュルと、小動物のように大好きなリーゼに見上げられてしまったエドヴィン王子は、緊張のために妙に声が高くなってしまったが、どうにか2文字を戻すことができた。

「あら、あなたは……」

 ぎくり、とエドヴィン王子は体をこわばらせた。
 ちなみにこの時のエドヴィン王子の手は、リーゼの肩に触れたくても触れられない、微妙すぎる距離間で宙に浮いていた。

「な、なんでしょうか」
「もしかして」
「…………」

 この時、自分の唾が喉を通って飲み込まれていく音を、人生で初めてちゃんとはっきりと聞いたエドヴィン王子だった。

「…………」
「…………」

 じーっと、リーゼがエドヴィン王子の顔に自分の顔を近づけていく。
 それも、目をパチクリと開けたまま。
 エドヴィン王子の体は立派な健全男子。
 そんなことされようものなら、下半身が大変なことにならない訳が無い。

「ちょっ、ちょっ……」

 まずい状況だった。
 リーゼの太もも部分と、今1番近づいて欲しくないあの部分が、あと数ミリでピッタンコ。
 そんなことになれば、バレてしまう。
 エドヴィン王子の体が今、しっかりバッチコーイ状態になっていることが。
 だが心はヘタレでガラスハート。
 そんなバッチコーイ状態の自分をリーゼに知られて

「いやっ!変態!」

 と言われてしまったなら最後。
 復活できるか怪しい。
 何としても、ピッタンコは避けたい。

「あの、そのですね」

 うまいこと、腰を捻じ曲げることでリーゼの太ももとのピッタンコは避けられそうだと思った時だった。
 リーゼは、さらに華やいだように微笑んだ。
 エドヴィン王子は、別の意味でノックダウンされ、そのまま崩れ落ちた。

 そしてそんな様子を見ていたオペラグラッシーズの二人は

「何ですの、あのへっぴり腰」
「おそらく、アレ状態になったアソコをリーゼ様にバレたくない一心の苦肉の策かと」
「何言ってるの!お話的には、アレ的なアソコを擦り付けてこそ、相手を求めていることを伝えるのが1番でしょう!鉄板でしょう」
「まあ、わかりやすすぎるほどですね」
「本当これで失敗したら、ちょん切ってやろうかしら」
「ダメですさすがにそれは、国が破滅します」

 このように街中でしていたら確実にアウトーな会話を堂々と繰り広げていた。