「ねえ、凪くん」
「なに?」
「どーしてここにいたの?」
「……一葉が、」
「うん、」
「帰ってくるのすげー遅かったから」
前を向いたままの凪くんの表情は見えない。
でもきっと冷たい表情はしてないだろうな、と思った。
前方にはもう私たちの住んでるマンションが見える。
カン カン
マンションの古びた鉄の階段からは金属の音がした。
「おやすみ」
ぼーっとしているとあっという間に玄関についてしまったみたい。
玄関の闇に溶け込んでいく凪くんの背中を見ると、
どうしても切ないような、悲しいような気がして。
「……一葉?」
━━━━━━溢れ出る感情が抑えられなかったみたい。



