その時の、その笑顔で紗英の心は掴まれてしまったみたい…


それだけだったら、まだこんなに騒ぐことはなかったのかもしれない…


とどめを刺されたのは、次の日傘を返しに2年の下駄箱近くで朝待っているとその人の声がしたらしくて


そのまま行こうとしたとき…


『……ヘックション…』


『おー、お前風引いたのか?珍しいな』


そんな声が聞こえてきた


『あれ?でも昨日お前かさ持ってたくね?』


『あーー、困ってる一年の可愛い女の子に貸しちゃった』


そう言って友達と教室に行ってしまった


『もしかして…あのとき折り畳み傘なかったってこと?それなのに私にわざわざ…』