「おいっ、ストーカー」
「ッ?!」

駅から高校の正門へと向かっていると、突然背後から声がかけられた。
既に予鈴が鳴り終わったくらいの時間帯だから、同じ高校の生徒はちらほらしか見当たらない。
みんな、正門へと桃子の横を颯爽を駆け抜けてゆく。

「今朝は寝坊か?」
「あんたとは違うわよっ」
「ストーカーの次は、堂々と遅刻ってわけか」
「何が言いたいの?ってか、遅刻常習犯のあんたには言われたくない」

匠刀から話しかけられても、早歩きは止められない。
1分でも早く、学校に向かいたいから。

「私と話してると、遅刻するよ?あんたの足なら、まだ十分に間に合うでしょ」

ちらりと真横を歩く匠刀に視線を向ける。
私が走れないのを、匠刀は知っている。

「担いでいってやろうか?」
「は?」
「お前ヒョロヒョロだから、大して重くねぇだろ」
「……うるさい、余計なお世話だよっ」

ヒョロヒョロだとか、か弱いとか言われるのが一番嫌い。

これでも一応年頃の乙女だから、グラマラスな体型にも憧れる。

女性ホルモンが多く含まれるという、大豆食品をや生キャベツを頑張って食べたり。
良質なたんぱく質やアミノ酸もすすんで摂るようにしてるけれど。

体重増加は心臓に負担をかける。
だから、頑張ったところで体型が変わるほど、成長は見込めない。


正門をくぐって、玄関へと急ぐ。

「目障りだから、先に行きなよっ」
「あっ、そう」

遅刻常習犯の匠刀を道連れにはできない。
匠刀なら、階段を数段飛ばしで駆け上がれば滑り込みセーフだと思うから。