桃子と同じ年の弟・匠刀(たくと)
兄と同じく長身で鍛え抜かれた体躯ではあるが、性格は真逆。

兄の虎太郎は硬派で、男子にも人気がある。
それに比べ弟の匠刀は、とにかくチャラい。
彼から話しかけているのか、周りの女子が寄って行くのかは分からないが、常に周りに女の子がいる。
しかも、何を考えているのか全く読めない、規格外の宇宙人タイプだ。


桃子の自宅は両親が経営している鍼灸・整体院で、津田兄弟は父に連れて来られ、幼い頃からの常連だ。
だから、幼なじみというか、腐れ縁というか。
切っても切れないような関係だ。

匠刀の口を手で覆い、発言権を取り上げた桃子は、キッと睨み上げていると。
その桃子の手を掴み返して来た。

「俺を脅す前に、自分が犯してる罪をどうにかしろ」
「は?」
「今日はボーダー柄かよ」
「……ッ!!」
「迷惑防止条例違反で通報すんぞ」
「っっ……」

ポンッと匠刀にお尻を叩かれた。

彼を撮影し損ねると思って、慌ててリュックを背負って来たから。
制服のスカートの裾が挟まって、下着が見えてしまっていた。

よりにもよって、こいつに見られるなんて。

「人のもの欲しがったらダメだって、小学校で教わらなかった?」
「は?」
「何度も言うけど、兄貴には『彼女』ができたから」
「……分かってるよ」
「わかってんなら、いい加減諦めろや。マジでうぜぇ」

告白する勇気もなくて、ただ見てるだけで満足だった。
だから、彼女ができたからといって、そんな急に気持ちなんて整理できるわけない。

それなのに、この男(好きな人の弟)は、傷ついてる私の心にずかずかと土足で入り込む。

「私が誰を好きだって、あんたには関係ないでしょっ」
「……ばーか」
「ばかっていう奴が、ばかなんだからっ」