やっていける気がしないと、思った。



「なぁんだ?育江(いくえ)ちゃんの隠し子かいな?」


「まさか。冗談やめてケンちゃん。弟の子よ、弟の子」


「んじゃあ親戚ってことかい?遊びに来たんか、こんな田舎に」


「…違うのよ。今日からここで暮らすの」



次から次に顔を出してくる、近所の面々。

珍しいことがあると噂が噂を呼んで、こんなふうに集まってくるらしい。


「暮らす?なんかあったんか?」と、デリカシーの欠片もない質問が飛び出す前に、伯母(おば)さんは口を開いた。



「彗(すい)ちゃん、ケンちゃんのぶんのお茶も用意してもらっていいかしら。この人こう見えて、町内会の班長さんだから」


「……うん」



町内会ってなに。
班長さんってなに。

初対面の私がお茶を出さなきゃいけないほど偉い人なの、ケンチャンは。