『なにがあるか分からない。…万が一のために持っていきなさい』
『……いい、の…?』
『…その他にも足りなかったら、また言うんだぞ』
大学に、行きたい。
進学をしたいんです。
必ずいずれは返します。
だからせめて、ほんの少しの援助だけでもしてもらえませんか───、
とは、さすがに言えなかったけれど。
『母さん、行きくらいは会場まで送っていってやったらどうだ』
『え…?…そうね、ほら彗ちゃん車乗って』
『っ…、…ありがとう…』
“母さん”って…。
今まで伯父は伯母のことを“育江”と、名前で呼んでいたはず。
まるで、まるで。
ここにもうひとつの家族があって、まだぎこちないけれど、両親がいて義理の娘がいて、そんなものがあるみたいに。
落ち着いた頃に改めて話してみてもいいのかなって、もしかすると話だけでもあしらわずに聞いてくれるかもしれないって。
そんな期待を、この2人に対して抱くようになる日が来るなんて。



