夏休みが近づく手前、5日間に渡って行われた期末テストよりも夢中になるものが、私にできてしまうなんて。


これが終わったら、とうとう。

ここを乗り越えたら、ついに。


自分の進路を定めるテストよりも、目の前に広がった青を追いかけたい気持ちのほうが強かった。



「彗、さんきゅーな」


「……もう終わったの?」


「いや。そういや日直だったっつって、ちょっと抜けてきた」



なにを言っているのか、わからないよ友利。

やっぱりあんたとは会話のキャッチボールが成り立たないみたい。


放課後たったひとり席についてシャーペンを滑らせていた私のもと、急ぐつもりのない小走りで教室に入ってきた男子生徒。


もしかして私は騙されたのだろうか。


開けられた窓、揺れるカーテン。
グラウンドから聞こえる高校球児たちの声。

そんなものが、怒る気力など優しく消していった。



「あなたに頼まれました。この学級日誌」


「あ、はい知ってます」