「正直言っても、申し分ない成績だぞ早見。…進学、考えてるか?」


「……視野には、入れてます」


「…そうか」



そうとしかまだ答えられなかった。

完全に「進学したいです」とは、やっぱり言えないところがある。



「まだ時間はある。じっくり悩み抜け」


「…はい」



放課後の職員室。

担任は背中を向けた私へと、独り言のようにつぶやいた。



「…それだけじゃない相談も、相談員がいるからな早見」



進学校に通っていたときは自分の進路のためだけに勉強していた。

勉強すればするぶん、エレベーターのように上って行けるんだと。


だけど今、私の道は階段に変わった。

自分から足を動かさなければ上へはあがっていけない。



「どうも。相談員の千葉です」


「バーチーだったんだ…」


「ん?なんて?」


「あ…、千葉先生」


「よろしい」