私とまったく同じ動きをした男、現る。



「……って、君はあのときの!」


「…図書館ではお静かに」


「あ、ごめん。って、そのあいだに取るのはズルくない?」



覚えているなら尚更だ。

ここはあのときのお礼も含めて、あなたは私に譲り渡すべき。


どうにか雑誌は諦めたらしい男はそう、少し前に学校前で友利のことを聞いてきたキャップくんだった。


今日はキャップはしていないみたいだけど、なんとなく私も気づくことができた。



「野球、好きなの?前も見てたよね。そのあとシズ……マネージャーに押されてたけど」


「……幻覚ですよ、それ」


「ははっ、ほんとに?」



……見られてた。
森さんに押されたの、見られてた。


というより、このひと私が選んだ席の隣に当たり前のように座ってくる…。


ひとりでじっくり読みたいからと、雑誌は開かなかった。

これは借りることにして家で落ち着いて読もう。