山々に囲まれたこの地は、とつぜんの雨が多い。

しかもちょうど梅雨となれば80%の確実で夕立に当てられる。



「これが止んだら帰ろう…」



ここはある程度の建物が揃った市街地にある、市立図書館。

1時間に1本しか出ない電車に乗って、わざわざやって来た。


さすがにこの夕立は1時間以上も続かないだろうから、止んだ頃に駅に向かえばタイミングは合いそうだ。



「……どうせ伯母さんには言えてないままだけど」



法律や政治、経済に経営、教育、福祉、文学と心理。

様々な分野によって道が分かれる大学という場所。


やりたいことも、夢も、はっきりとは決まっていない。

ただ、人のために動けるような人間になりたい。


高校3年生の6月、とりあえず私は難しいことを考えるのはやめた。



「……たぶん俺が先ですね」


「…いや、私のほうが早かったです」


「いやいや、1秒差くらいで俺ですよ」



“さあ、甲子園!”という見出しに釣られて。

歴代代表校の出場データが載っている雑誌っぽいからと、無意識にも棚から取ろうとすれば。