たらりと、汗が垂れる。

ごくりと、息を飲む。

ぎゅっと、手に汗を握る。


大歓声の球場、応援歌を奏でるブラスバンド、手を合わせる保護者、最後まで笑顔で応援しつづけるチアリーダー。

ダッグアウトから枯れるほどの声を出す高校球児たち。


広がった青空、
じりじりとマウンドを照らす太陽の光。

客席は空いている場所を探すほうが難しい。


────県大会・決勝。


熱い熱い夏が、すぐそばにある。



《9回裏、いよいよ最後の攻撃となりました。7-5、ツーアウトランナー2塁3塁。このチャンスを形にできるか八木坂高校。
繋ぐか、サヨナラ逆転か、それともここで夏を閉じるか。70年ぶりとなる甲子園への切符が懸かっています》


《相手は春のセンバツでもベスト4に入った強豪、若戸学園ですらねえ~。若戸の壁はなかなか手強いんじゃないでしょうか》


《ただ彼は今大会で3安打1四球。打率は4割を超えています。さあ打てるか背番号2、キャッチャー友利(ともり)くん》