黒瀬(くろせ)くんは、学校の人気者。

 去年のバレンタインなんて、山のようにチョコをもらっていたくらい。

 誰からも気だるげにチョコを受け取って、放課後になったら、おなじクラスや他のクラスの男子にチョコをくばって、荷物を減らしていた。


 だから、私もチョコを渡したいと思いつつ、去年とおなじくがまんした今日なのだけど。




「黒瀬くんっ。好きです!」


「…へー。意外、白鳥(しらとり)って俺みたいなの苦手だと思ってた」




 移動教室での授業が終わったあと、黒瀬くんを呼び止めて、周りに人がいなくなってから告白した。

 黒瀬くんはすこし目を丸くして、低めのいつもの声でつぶやく。

 これが、私なりのチョコのつもり、だったんだけど…。