【SS集】きゅん、集めました

 なにかと思えば、スッと丸メガネを外して、レンズを通していない切れ長の瞳で私をとらえた。




「こっちのほうがうれしい?」


「え…」


「…あー、でもやっぱぜんぜん見えないわ。もっとこっち寄ってくれる?」





 クイクイ、と人差し指を折りまげて呼ばれ、この顔に近づくの…とためらいながら、さらに身を乗り出す。

 すると、あごを軽くつかまれて、顔を引き寄せられた。




「っ、ま…」




 ちょっと近すぎ…っ!と止めるのが遅かったのか。

 ふに、と唇にやわらかい感触がして、脳がすべての処理を停止する。




「…これくらい図太くやんないと」




 お兄さんは切れ長の目を(あや)しく細めて、ふっと笑みを浮かべた。

 1枚も2枚も上手すぎて、心臓がギュンッと()めつけられるのを感じながら、口を押えていきおいよく離れる。