「カワイ。そういうのひさしぶりだわ」
「え。…なれてるの?」
めずらしく弧を描いている唇にもドキッとするけど。
それよりもお兄さんの発言が気になりすぎて、目を丸くする。
お兄さんは開いていた本にしおりをはさんで、前髪をかきあげた。
「ま、こういう顔してるから」
「…」
あぁ、とも言えず。
むき出しになった顔にただ見惚れる。
筆ペンでシュッと描いたような眉。高い鼻。きれいな肌。
思ったよりも破壊力が強くて、心臓がバクッバクッと、声にできなかった感情を口にしているようだった。
止まった時間がもどったのは、お兄さんが前髪を下ろしたとき。
ハッと我に返った気持ちで何度かまばたきをすると、お兄さんはメガネのつるをつかむ。



