「【本の虫】だって。お兄さんみたいだから、買おうかなって」
カウンターに身を乗り出すと、いつも遠かった店員さんの顔が目の前にせまる。
そして、本を見てばかりで めったに交わらなかった視線が、パチッとからまった。
切れ長の大きな瞳に、笑みを浮かべた私の顔が映りこんでいる。
我ながら鼓動がうるさくて、顔に熱でも集まりそう。
「…ナンパ?」
店員さんの低い声からあっさり出てきた言葉に、私の行為をいやでも自覚させられた。
「…ん、まぁ」
燃えるような羞恥心におそわれて、目をそらしながら、横髪をつかむ。
長めの髪で口元を隠すと、鼻で笑うような吐息が聞こえて、思わず視線をもどした。



