レナードくんはすこし強引にキスをして、魔法を使う。
でも、唇にそっとふれるその感触がやさしいことに気づいてから、私はレナードくんのことをもっと知りたいと思うようになったんだ。
顔を上げてまっすぐにレナードくんを見つめると、彼は意外そうにパチリとまばたきをした。
「ふーん…じゃあ、“仲良く”するか?」
レナードくんはニヤリと口角を上げて、いたずらに目を細める。
立てた人差し指をクルリと回し、2人分のサンドイッチを宙に浮かせたあと、レナードくんは私の肩を抱き寄せた。
急に密着した体から温もりが伝わってきて、ドキッとする。
「俺はアイリスのこと、“イイ”と思ってた」
「えっ?」
「知ってるか?魔法を使わずにするキスは、クセになるらしいぜ」
妖しく笑ったレナードくんは、もう片方の手を私の後頭部にそえて、やさしく唇を重ねた。
バクバクッと心臓がはねた私の体を、レナードくんの腕が抱きしめる。
それは、この日を境に何度も彼とすることになった、“意味のないキス”を初めてした瞬間だった。
fin.



