視線を下げれば、白いYシャツに包まれた胸板が目の前にあって、紺色のネクタイが…あぁ、どうしてゆるめるの…っ!




「あ、あのっ、気持ちはうれしいんだけど、わたしまだっ…」


「“まだ”ってことは、可能性あるんだよね?いま、落ちて。そんなかわいい顔見て我慢なんて、俺、できないし」


「えぇぇ…っ!」




 そ、それは凡人のわたしがイケメンさんに落ちるのなんて、確定事項かもしれないけど…っ。

 キスは好きな人としたい…っ!




「俺じゃダメ?」




 頬を撫でられる。

 横の髪を()くように、指を通されて…。


 わたしを見つめる瞳が、悲し()なものに変わった。




「うぅ…っ」


「大切にするよ。他の女の子も見ない」




 迫ってくる顔に慌てふためいて、ぎゅっと目をつむると、まぶたに温かいものが触れる。

 それが離れていったあとにうすく目を開けると、赤い唇が目に入って。