階段に座ったまま、手をうしろにつく。

 迫る彼に頬を赤くして、身を引こうとしても、段差が腰に当たって自由に動けない。




「ねぇ、好きだって何回も言ったよね?それでも俺のところに来るのは、なにされてもいいっていう意味にしかとれないよ?」


「ひゃっ…わ、わたしはそんなつもりはっ、全然なくて…っ!」




 ただ最近、あなたを見かけないから、ここに来たら会えるかなって思っただけなのに…っ。


 黒い髪が垂れて、目の横にかかる。

 瞳を細めてわたしを見つめる姿は、国宝級の美しさ。


 今でも信じられない。

 みんなにモテモテの彼が、わたしを好いてくれているなんて。




「キスくらい、してもいい?」


「だっ、ダメだよっ…!」




 現実逃避してる場合じゃなかった…!

 この状況…ど、どうにかしないと…っ。