私は教卓へ背を預け,しゃがみながら時計の針を眺め,とくとくと心音を聴きながら佐久間くんを待った。

すぅ,と吸っては,はーーと吐く。

酸素を脳に届けてくれる二酸化炭素が,全部無くなっちゃうんじゃないかってくらい,思い切り吐ききって。

ようやく,人の気配に気がついた。

ドアの前,凹みのむこう。

誰かが,立ったまま躊躇うように息を殺している。



「……佐久間くん?」



声をかけるとその人影はそっと動いて,気まずそうに入室した。

何をしてるの?

なんて,聞ける雰囲気じゃなかった。

この日の約束を告げた日には,あんなに元気良く走り去ってしまったのに。

あの時とは違う,佐久間くんは何かを感じ取ったのだと,理解した。

細く伝わる佐久間くんの緊張に,私も言葉を飲み込み,また探す。



「準優勝,おめでとう。表彰状,佐久間くんが貰いに行ってたね」



出てきたのはありきたりで,久しぶりに佐久間くんを真っ直ぐに思いやる言葉。

これが最後になるかもしれないのは,正直つらいけど。

他に,言葉は見つからなかった。