旦那様、私に愛を教えて下さいますか?

その瞬間、旦那様が私の手を掴み直す。

「旦那様・・・!?」


「ねぇ、東木さん。もう一度言うよ。本当にあの日、何の思惑もなく声をかけたと思う?」


「え?」


「橋の真ん中で壊れそうなくらい涙をこぼしてたんだ。でもね、君をあの橋で見たのは初めてじゃなかった」

「いつも、あの橋で涙を堪《こら》えながら川を眺めていた。ああ、この子はもう壊れるんじゃないかって不安だった」

「声をかける勇気などなかった。でも、君はあの日ついに涙を溢していたんだ」

「あれほど涙を堪えていた子は、一度泣き始めたら涙の止め方など分からないのではないかと思うほど泣いていた」

「一度でいいから、君の笑顔が見てみたかったんだ」