「オー、そうかそうか。 邪魔したな。」 そう言ってスマホを切ると「俺も頭を冷やしてくるよ。」と言って散歩に出掛けて行った。
「大丈夫なのかな?」 「何がです?」
「あの女だよ。」 「さあ、、、。 誰かを待ってるんじゃないですか?」
「それだけならいいがね。」 親父さんは心配そうな顔で肝を焼いている。
「二人が動き始めたわ。」 「何だって? 二人が動いた?」
「たぶん散歩じゃないかしら?」 「散歩か。 動いてるのは誰だ?」
「一人は岩谷啓介。 もう一人は分からないわ。」 「岩谷か。 軽いやつだな。」
結城は肝を齧りながらパン屋の辺りに目をやった。 その辺りに見たことの有る顔が有った。
「あいつ、、、。」 「どうしたんだ?」
「どっかで見たことの有る男が居るなと思ったら狼の沢田敏明ですよ。」 「沢田?」
「そう。 いつもナイフを持ち歩いていて殺し屋って呼ばれてる男です。」 「じゃあ瑞樹たちが危ないな。」
「警察は待ってください。 刺激すると親父さんまで危なくなる。」 「とは言うけど打なあ、、、。」
結城はスマホを取り出すと電話を掛けて話し始めた。」 「オー、結城じゃないか。 飲んでるのか?」
「そう。 今ね、大下駅前の屋台に居る。」 「何か用か?」
「狼の沢田が岩谷さんたちを狙っている。」 「何だって? 本当か?」
「見張り役の女が居る。 そいつに屋台を見張らせていたらしい。」 「分かった。 杉山太一郎と古賀純也を連れて行く。」
「待ってる。 急いでくれ。」 それから彼は大村さんを呼び出した。
「どうしたんだよ?」 「シーーーーーーーー。」
結城は口を押えてから大村さんに話し始めた。 「あそこに女が立ってる。」
「誰か待ってるんだろう。」 「いやいや、パン屋の陰に沢田が居るぞ。」
「何だって? 沢田が?」 「そうだ。 おそらくは岩谷さんと瑞樹を狙ってる。」
「危ないな。」 「お待たせ。」
そこへ藤下洋二と杉山と古賀がやってきた。
「おいおい、ここで乱闘でもするのか?」 「乱闘はしないよ。 まずはあの女を封じるんだ。」
「女を封じたって、、、。」 「結城、お前は岩谷と瑞樹にこのことを伝えてくれ。」
「分かった。」 結城が二人を追い掛けていくと杉山が沢田の動きを見詰めている。
「ちきしょう、囲まれたぜ。」 「あんたがボーっとしてるからでしょう?」
「お前こそそこで何をしてるんだよ?」 「あんたねえ、私に見張りを頼んでおいてそれは無いでしょう?」
「こうなったらイチかバチかだ。」 「やめてよ。 警察が来たじゃない。」
「やあ、沢田君じゃないか。 こんな所で何をしてるんだ?」 「何にもしてねえよ。」
「じゃあ何で松村茜が居るのかね?」 「そんなやつ知らねえよ。」
「お前たち、中学時代からグルだったもんなあ。 話を聞かせてもらうぜ。」 覆面でやってきたパトカーに二人は乗せられていった。
「結城、お前の決断には頭が下がるわ。」 「何でだよ?」
「もし沢田を見付けていなかったら俺たちは殺されてたかもしれない。」 「まあいい。 焼いたから食っていけよ。」
親父さんは残っていた串を大村さんたちにも差し出した。
それにしても沢田敏明は何をしたかったのだろう? 岩谷さんと瑞樹を殺したところで何が有るというのだろうか?
大村さんには解けない謎だった。 「そうだそうだ。 彼女の話なんだけど、、、。」
「やつがどうかしたのか?」 「石川産婦人科はかなり前に廃業してたよ。」
「廃業してたって?」 「そうだ。 建物はまだまだ残ってるけどね。」
「じゃあ、俺が渡されたカルテは?」 「別人の物だよ。 若しくは別の石川産婦人科の物だ。」
「そうだよ。 大村さん、俺たちも彼女の様子はずっと見てたけど高中と絡めるような隙は無かったよ。」 「そうか。 そうだよな。」
となると古館が何ゆえに石川産婦人科のカルテを持っていたのか? 解けない謎が残ってしまう。
焼き鳥を食べながら思案に暮れる大村さんを見詰めている結城はふと考えた。 (古館にも何か考えが有るのでは?)
元はと言えば検察官だった男だ。 弁護士にも暴力団にも顔は広い。
おまけに議員先生方まで気持ち悪いほどに擦り寄っていく。 そこには何かが有るはずだ。
「さあそろそろお終いにするぞ。 明日も来てくれよ。」 親父さんはそう言うと屋台を畳み始めた。
杉山たちと大村さんは少し離れたスナックに行くらしい。 結城と岩谷さんはそのまま家に帰ってしまった。
「松村茜が居ただろう。」 「ああ、あいつね。」
「あいつと沢田は出来てたんだよな。 中学生の頃から。」 「おいおい、出来てたって何だよ?」
「あの二人は激しい激しい恋仲だったってわけだ。」 「恋仲ねえ。」
「しかもな、高校生の時に沢田は孕ませてるんだよ。」 「産ませたのか?」
「その時は親父にド突かれて下ろしたらしいんだ。」 「ほう。 それで?」
「沢田が大学に入った時、茜を呼び付けて同棲を始めた。 茜はスナックで働いてたらしい。」 「よく聞く話だな。」
大村さんは水割りを手に取った。 「そいつらがまたまたこうして町に戻ってきたわけか。」
「沢田が狼に飛び込んだのは5年前。 獄導が大きくなり始めた頃だ。」 「あの頃の狼はまだまだ小さかったな。 沢田が人間を集めてきたんだ。」
「もちろん、その中には茜を抱かせて引っ張り込んだやつらも居る。」 「女を抱かせて引っ張り込むってか? さすがは狼だな。」
「その頃から沢田は殺し屋って呼ばれてたんだ。」 「これまでに傷害事件を3件起こしてるからね。」
「それじゃあ今頃は服役中じゃないか。」 「ところがだ。 1件しかばれてないんだよ。 しかも裁判はこれからだ。」
「これからだったら拘置所に居るんじゃないのか?」 「そこは沢田だよ。 おべっかを使って帰らせてもらってるんだ。」
「変な話だなあ。 あいつにそんなことが出来るのか?」 「それを裏から支えてるのが高中だよ。」
「そうか。 高中か。」 「大村君の彼女のことも調べてみたんだ。」
「何か分かったのか?」 「大学時代に高中の弟と関係を持ってたね。」 「関係?」
「肉体関係だ。 惚れたの惚れられたのってな。」 「それで高中が、、、。」
「本当ならそこで決着するはずだったんだ。 でも大学を卒業した後で大村君と出会って恋仲になっちまった。」 「ということは、あの石川産婦人科のカルテは、、、?」
「おそらくは大学時代の物だろう。 それを日付だけ書き替えて大村君に突き付けたんだよ。」 「そうだったのか、、、。」
2時を過ぎて大村さんはスナックを出た。 (大学時代のことならやつも気が付くはずは無いな。)
ブラブラと歩きながら近藤のことを考える。 溶岩の中にでも飛び込みたいくらいの気分だ。
高中と肉体関係が有って子供を産んでいたとすれば、、、。 その子供をネタに拉致することは簡単だ。 抵抗しなかったのも頷ける話だよな。
それにしても古舘は誰からあのカルテを? それが謎だな。
沢田はというとこの騒動がきっかけで拘置所に拘留されてしまったらしい。 もちろん茜だって無傷じゃ居られない。
売春防止法と麻薬取締法違反が重なって逮捕されちまった。 結城は翌日も駅前をブラブラと歩いていた。
「大丈夫なのかな?」 「何がです?」
「あの女だよ。」 「さあ、、、。 誰かを待ってるんじゃないですか?」
「それだけならいいがね。」 親父さんは心配そうな顔で肝を焼いている。
「二人が動き始めたわ。」 「何だって? 二人が動いた?」
「たぶん散歩じゃないかしら?」 「散歩か。 動いてるのは誰だ?」
「一人は岩谷啓介。 もう一人は分からないわ。」 「岩谷か。 軽いやつだな。」
結城は肝を齧りながらパン屋の辺りに目をやった。 その辺りに見たことの有る顔が有った。
「あいつ、、、。」 「どうしたんだ?」
「どっかで見たことの有る男が居るなと思ったら狼の沢田敏明ですよ。」 「沢田?」
「そう。 いつもナイフを持ち歩いていて殺し屋って呼ばれてる男です。」 「じゃあ瑞樹たちが危ないな。」
「警察は待ってください。 刺激すると親父さんまで危なくなる。」 「とは言うけど打なあ、、、。」
結城はスマホを取り出すと電話を掛けて話し始めた。」 「オー、結城じゃないか。 飲んでるのか?」
「そう。 今ね、大下駅前の屋台に居る。」 「何か用か?」
「狼の沢田が岩谷さんたちを狙っている。」 「何だって? 本当か?」
「見張り役の女が居る。 そいつに屋台を見張らせていたらしい。」 「分かった。 杉山太一郎と古賀純也を連れて行く。」
「待ってる。 急いでくれ。」 それから彼は大村さんを呼び出した。
「どうしたんだよ?」 「シーーーーーーーー。」
結城は口を押えてから大村さんに話し始めた。 「あそこに女が立ってる。」
「誰か待ってるんだろう。」 「いやいや、パン屋の陰に沢田が居るぞ。」
「何だって? 沢田が?」 「そうだ。 おそらくは岩谷さんと瑞樹を狙ってる。」
「危ないな。」 「お待たせ。」
そこへ藤下洋二と杉山と古賀がやってきた。
「おいおい、ここで乱闘でもするのか?」 「乱闘はしないよ。 まずはあの女を封じるんだ。」
「女を封じたって、、、。」 「結城、お前は岩谷と瑞樹にこのことを伝えてくれ。」
「分かった。」 結城が二人を追い掛けていくと杉山が沢田の動きを見詰めている。
「ちきしょう、囲まれたぜ。」 「あんたがボーっとしてるからでしょう?」
「お前こそそこで何をしてるんだよ?」 「あんたねえ、私に見張りを頼んでおいてそれは無いでしょう?」
「こうなったらイチかバチかだ。」 「やめてよ。 警察が来たじゃない。」
「やあ、沢田君じゃないか。 こんな所で何をしてるんだ?」 「何にもしてねえよ。」
「じゃあ何で松村茜が居るのかね?」 「そんなやつ知らねえよ。」
「お前たち、中学時代からグルだったもんなあ。 話を聞かせてもらうぜ。」 覆面でやってきたパトカーに二人は乗せられていった。
「結城、お前の決断には頭が下がるわ。」 「何でだよ?」
「もし沢田を見付けていなかったら俺たちは殺されてたかもしれない。」 「まあいい。 焼いたから食っていけよ。」
親父さんは残っていた串を大村さんたちにも差し出した。
それにしても沢田敏明は何をしたかったのだろう? 岩谷さんと瑞樹を殺したところで何が有るというのだろうか?
大村さんには解けない謎だった。 「そうだそうだ。 彼女の話なんだけど、、、。」
「やつがどうかしたのか?」 「石川産婦人科はかなり前に廃業してたよ。」
「廃業してたって?」 「そうだ。 建物はまだまだ残ってるけどね。」
「じゃあ、俺が渡されたカルテは?」 「別人の物だよ。 若しくは別の石川産婦人科の物だ。」
「そうだよ。 大村さん、俺たちも彼女の様子はずっと見てたけど高中と絡めるような隙は無かったよ。」 「そうか。 そうだよな。」
となると古館が何ゆえに石川産婦人科のカルテを持っていたのか? 解けない謎が残ってしまう。
焼き鳥を食べながら思案に暮れる大村さんを見詰めている結城はふと考えた。 (古館にも何か考えが有るのでは?)
元はと言えば検察官だった男だ。 弁護士にも暴力団にも顔は広い。
おまけに議員先生方まで気持ち悪いほどに擦り寄っていく。 そこには何かが有るはずだ。
「さあそろそろお終いにするぞ。 明日も来てくれよ。」 親父さんはそう言うと屋台を畳み始めた。
杉山たちと大村さんは少し離れたスナックに行くらしい。 結城と岩谷さんはそのまま家に帰ってしまった。
「松村茜が居ただろう。」 「ああ、あいつね。」
「あいつと沢田は出来てたんだよな。 中学生の頃から。」 「おいおい、出来てたって何だよ?」
「あの二人は激しい激しい恋仲だったってわけだ。」 「恋仲ねえ。」
「しかもな、高校生の時に沢田は孕ませてるんだよ。」 「産ませたのか?」
「その時は親父にド突かれて下ろしたらしいんだ。」 「ほう。 それで?」
「沢田が大学に入った時、茜を呼び付けて同棲を始めた。 茜はスナックで働いてたらしい。」 「よく聞く話だな。」
大村さんは水割りを手に取った。 「そいつらがまたまたこうして町に戻ってきたわけか。」
「沢田が狼に飛び込んだのは5年前。 獄導が大きくなり始めた頃だ。」 「あの頃の狼はまだまだ小さかったな。 沢田が人間を集めてきたんだ。」
「もちろん、その中には茜を抱かせて引っ張り込んだやつらも居る。」 「女を抱かせて引っ張り込むってか? さすがは狼だな。」
「その頃から沢田は殺し屋って呼ばれてたんだ。」 「これまでに傷害事件を3件起こしてるからね。」
「それじゃあ今頃は服役中じゃないか。」 「ところがだ。 1件しかばれてないんだよ。 しかも裁判はこれからだ。」
「これからだったら拘置所に居るんじゃないのか?」 「そこは沢田だよ。 おべっかを使って帰らせてもらってるんだ。」
「変な話だなあ。 あいつにそんなことが出来るのか?」 「それを裏から支えてるのが高中だよ。」
「そうか。 高中か。」 「大村君の彼女のことも調べてみたんだ。」
「何か分かったのか?」 「大学時代に高中の弟と関係を持ってたね。」 「関係?」
「肉体関係だ。 惚れたの惚れられたのってな。」 「それで高中が、、、。」
「本当ならそこで決着するはずだったんだ。 でも大学を卒業した後で大村君と出会って恋仲になっちまった。」 「ということは、あの石川産婦人科のカルテは、、、?」
「おそらくは大学時代の物だろう。 それを日付だけ書き替えて大村君に突き付けたんだよ。」 「そうだったのか、、、。」
2時を過ぎて大村さんはスナックを出た。 (大学時代のことならやつも気が付くはずは無いな。)
ブラブラと歩きながら近藤のことを考える。 溶岩の中にでも飛び込みたいくらいの気分だ。
高中と肉体関係が有って子供を産んでいたとすれば、、、。 その子供をネタに拉致することは簡単だ。 抵抗しなかったのも頷ける話だよな。
それにしても古舘は誰からあのカルテを? それが謎だな。
沢田はというとこの騒動がきっかけで拘置所に拘留されてしまったらしい。 もちろん茜だって無傷じゃ居られない。
売春防止法と麻薬取締法違反が重なって逮捕されちまった。 結城は翌日も駅前をブラブラと歩いていた。



