「それよりさ、瑠奈」

「なぁに?」

「俺、まだ忘れてないからね?」


憂鬱な無表情を浮かべる。私はなんのことかわからなくて、目を逸らした。


「瑠奈の推しのこと」

「え、ええっ?」

「誰なの?ソイツの人生潰してくるから教えて」

「んな!!わ、私の推しの人生を潰すとか最低!!」

「えっ、そ、そうじゃなくて……瑠奈?」


ぷいっとそっぽを向いた。


私の推し、瑠夏(猫)を侮辱するだなんて……!!いくら朔くんとはいえ、許せないよ!


「ご、ごめん今のは冗談だから——」

「私、購買行ってくる!」

「え、ちょっと!」


今日は休日だから、朔くんと部屋でゆっくりしていた。

だけど……あんなことを言われちゃったから、なんだか帰りたくない……!


スマホだけ持って部屋を出ていく。


しばらく行っても朔くんが追い付いて来なかったので安心していると……。


「瑠奈?」

「えっ……?き、桐谷さん?」

「……この間はすまなかった」


深く頭を下げられる。本当に申し訳そうな表情をしていて、とても偽りには見えなかった。