勢いよく押し倒し、オデルの両腕を押さえつける。
 流れる白い髪が寝台に散らばるが気にしない。
 呆気に取られているオデルに気をよくしたシルディアは淑女らしさの欠片もない笑みを浮かべた。

「やっとわたしを見た。白百合、白百合って言うなら、少しはこっちにも気を配ってほしいものね?」
「き、みは……」
「わたし? わたしは……妖精姫フロージェ、です……」

 名乗ろうとして我に返ったシルディアはさぁーと全身の血の気が引いていくのを感じた。
 視線を彷徨わせながら内心やらかしたと暴れまわる。

(や、やっちゃった……。だ、だって全然、わたしのこと見ないから……って言い訳じゃなくて、どうすれば……)

 背中に伝う冷や汗と、自身がオデルを組み敷いている状況に頭がくらくらとしてしまい、思考が回らない。
 今にも泣きだしそうなシルディアは気が付いていなかった。彼女の下でオデルが肩を揺らしていることに。

「ぷっ」
「へ?」
「あははは!! 今の、完全に名前を口に出す場面だったでしょ!? それなのに、あはははっ!! 腹痛ぇ!」
「ちょっ、そんなに笑うことないじゃない!」
「気の強い君も大歓迎だけど……この体勢はいささか男の沽券に関わると思わないかい?」
「? きゃっ!」

 会話が成立するという当たり前のことに感動していれば、瞬く間に押し倒された。