「そのあとは?」
「最終的には魔力暴走でボンッです」
「……それは、もちろん比喩よね?」
「違います。ボンッとなるんですよ。魔力暴走した者が」
「……人が、ボンッと?」
「はい。ボンッと」
(つまり、魔力暴走したら死ぬのね)

 頷いた無表情のヴィーニャと顔が引き攣るシルディア。

「魔力暴走を抑えるようなものはないの?」
「ありますよ」
「! あるの!?」
「もちろんです。ただ、それは気休めでしかありません」
「そう……」

 眉を下げたシルディアを不思議そうに見るヴィーニャをはぐらすように歴史書に視線を落とす。

(わたしが思いつくようなことをオデルはもうやっているわよね。……あら?)
「先代竜の王のつがいは若くして亡くなったのね」
「上皇陛下のお祖母様ですね。子を成してすぐ亡くなられたと聞き及んでおります」
「きっと産後の肥立ちが悪かったのね……」
「そうかもしれませんね。シルディア様。根を詰めてもいけません。少し休みましょう?」
「そうね」

 ソファーに座り直したシルディアは淹れられた紅茶を飲んだ。

(死ななかった皇族にも何か共通点があるはず)
「楽しそうなことをしているね? 俺も混ぜてよ」

 温かな紅茶で喉を潤しながら、ぼんやりとしていると背後から声がかかった。
 艶やかな耳心地のよい低音が耳を打つ。
 この部屋に立ち入ることのできる男性は一人だけだ。

「オデル」
「シルディアが楽しそうでなによりだよ。読んでいるのは……歴代の竜の王について、か。皇国に興味が沸いたの?」
「そんなところよ」