乾いた喉を潤すように唾を飲み込む。

「アルムヘイヤにおいて、双子は禁忌。特に姉妹の双子は厄災をもたらすとされるの。生まれ落ちた瞬間に、姉もしくは兄は死が確定する」
「なんて惨い……」
「双子を生んだ母親が自死するぐらいには、価値観に左右しているわよ」

 シルディアが苦笑していると、優秀で勘のいいヴィーニャは眉を寄せた。
 オデルから出自を聞いたのだろう。
 曇った顔にますますシルディアは眉を困らせた。

「まさか、シルディア様も……」
「そのまさかよ。わたしは一度、殺されかけているわ。でも運のいいことに母が他国の姫だったの。そのおかげでわたしは今ここにいる」
「アルムヘイヤの価値観が受け入れられなかった王妃様が異議を申し立てたと」
「そうね。お腹を痛めて産んだのは自分だと主張したらしいわ」
「それを産後すぐに? やはり王妃となる人の肝の据わり具合は常人とは違うのですね」
「ふふっ。確かにそうかも。王妃の意見を尊重した国王は、表向きは妖精に愛された女児が産まれたと公表したの」
「シルディア様の存在は秘匿された、ということでしょうか?」

 信じられないと眉を寄せたヴィーニャは、心優しい女性なのだとシルディアは目を細め笑う。

「そうよ。わたしは妹の影武者となるために生かされた。でもフロージェが目を盗んで遊びに来ていたから、寂しくはなかったわ」
「仲の良い姉妹だったのですね」
「さっきの絵本を読み聞かせては、わたし達は絶対に仲違いをしないって誓ったものよ。でもね、影武者として何度か入れ替わりを始めてしばらく経った頃に事件は起こった」
「事件、ですか……?」
「えぇ。誘拐事件。誘拐されたのはフロージェ本人」
「アルムヘイヤには妖精姫を狙う命知らずな人間が……!?」
「いいえ。そんな罰当たりな国民はいないでしょうね。実行犯は妖精の見えない人だった」
「なるほど。他国の人間……」
「妖精のおかげでフロージェは傷一つなく助かったけれど、その日からフロージェは軟禁状態になったわ」
「それは、極端ですね」

 その言葉にシルディアは深く頷いた。